マジックの「真の目的」とは?【マックス メイビン死去に寄せて】

 

 

去る2022年11月1日に,Max Maven(マックス メイビン)氏が死去しました。

 

彼は「本物の魔術や呪術師(後述)」の末裔とも言える重要人物の一人でした。

 

彼亡き後,「魔法の掛け方の奥義」について,深く触れるチャンスは二度とないかも知れません。

 

そこで,この場を借りて「マジシャンの真の最終目的」を書き遺しておきます。

 

 

現代のマジシャンが忘れかけている「ルーツ」です。

 

いきなり「意味深な発言」に聞こえるでしょう笑

 

▼通読すると,奇跡を起こす方法」が論理的に分かります。本当です。

 

https://bareillycollege.org/max-maven/

 

 

 

<「プラセボ」と「ノセボ」>

原初の「魔術師の目的」は宗教的奇跡」を起こすことでした。

 

 

宗教的奇跡とは,西洋科学的にざっくり言うなら「プラセボ」「ノセボ」です。

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●プラセボ効果とは「偽薬(無効果)」を服用した患者が,回復する心因性の良作用です。

 

これは「白魔術」に相当します。

 

ノセボ効果とは,その逆で「無毒の偽薬」なのに「心因性の有害作用(体調不良など)」も生じます。

 

これは「黒魔術」に相当します。

 

どちらも薬の実際作用ではなく,「思い込みの作用」です。

 

心と体の相互作用については,心因性の失明(視覚障害)・失声,想像妊娠などの事例からも明白でしょう。

 

ストレスで腹痛や突発性難聴になるのも身近な例です。心身は密接です。

 

 

 

<「催眠導入」としてトリック>

元来,魔術師や呪術師は,プラセボ」や「ノセボ」を引き起こすために,導入段階として「トリック(手品)」を使います。

 

良くも悪くも「魔力」があると思い込ませる狙いです。

 

もちろん,科学教育の普及より遥か昔,エンタメ以前の時代です。

 

病人がマジックを見て,彼の魔力を信じると,続けてプラセボが起こせるのです。

 

→これは「催眠療法」や「気功治療」にも通じる原理です。

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●気功師が,手をかざして治療するのは,ざっくり言えば「プラセボ効果」です。

 

催眠術師には「類催眠現象」と呼ばれる半トリックがあります。

 

「両手を握って,伸ばした人差し指同士が近づく」「振り子をつまんで,念により回転方向を操る」などです。

 

 

【マックスメイビンの類催眠演技(上動画より)】

 

 

「被験者テスト」とも言われ,最初(導入)に行われます。

 

実は「人体の仕組み」を利用した当たり前の現象に過ぎません。

 

つまりはトリック(半分は無意識の作用)的ですが,催眠術師の言葉(あなたは眠くなるetc)が「プラセボ的な実効力」を持つに至る戦略(技量の疑似証明)なのです。

 

信じがたいかも知れませんが,心療内科ではアトピーの催眠治療なども普及しています。

 

(例)

 

 

<権威効果としての衣装>

マックスメイビンの髪型や服装は,いかにも魔力を持っていそうに見えます。

 

催眠術では「白衣を着ると,医者に見える」という話があります。

 

白衣を着た一般人に「体調が悪そうですね」と言われると,そんな気がしてくる(=ノセボ効果)が生じるのです。

 

「肩書き(白衣=医者)」が真実味を生み出し,権威効果」と呼ばれます。

 

※医者が誤診で癌告知し,死亡した例まで存在します。

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スーツや燕尾服を着た「エンターテイナーたる現代マジシャン」と「魔力の権威効果のための衣装」は,服装の意図がまったく異なるわけです。

 

※どちらが正しいという話ではありません。「魔術師の狙い」の理解です。

 

 

 

<魔術の構造>

ここまで総括すると,「魔術の構造」が見えてきます。

 

第一段階:トリック(手品)による類催眠的な誘導

第二段階:催眠状態(トランス)の深化

第三段階:宗教的奇跡(プラセボ/ノセボ)の発現

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※「深化」は五感を次々と支配していく過程で,最も深いのが「視覚の催眠状態」です。

 

五感の情報伝達は「脳への電気信号」なので,目の前の景色とは無関係に視覚も催眠支配できます。

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もともと魔術師は「プラセボによる治療」や「ノセボによる呪い」に至るべく「トリック(テクニック&ギミック)」を導入利用していた訳です。

 

(※一部の密教などにも同構造が見られます)

 

エンタメに特化した「現代のマジシャン」は,このルーツを忘れているでしょう。

 

とはいえ,今なお無関係ではありません↓

 

 

<マジシャンは奇跡を起こせる>

現代でも「本当に不思議なマジック」を見た客は,ひとりでにプラセボ/ノセボを起こします。

 

皆さんも,マジック中に「すごすぎて, 怖い」と言われる経験があるでしょう。

 

あるいは,子どもにスポンジボールを握らせると,重くなった・軽くなったと感じる(錯覚する)方がいます。

 

大人でもスコッチ&ソーダを握らせると軽くなった(シェルに重なっただけなのに)と感じる方がいます。

 

▶︎これらも「魔法を信じる力」が引き起こした「かけがえのない奇跡」です。

 

(効率的に誘導するには催眠術の学習(現在進行形のセリフ,ダブルミーニング,客と呼吸タイミングを合わせる等)がおすすめです)

 

 

<客に「幸せになるプラセボ」を掛けてあげる>

よく催眠術ショーでは,催眠を解く寸前に「あなたの人生は,ますます幸せが高まっていく」というような催眠口述が見られます。

 

とてもドラマチックで,あたたかい気持ちになるショー場面です。

 

これもプラセボを狙っています。

 

おなじく,マジックも魔法に見えたなら「幸せになるおまじない」を掛けてあげるのです。

 

演出の一貫(ハンドパワー)でも良いし,縁起の良いプレゼントでも良いでしょう。

 

これこそマジシャン名利に尽きる「本物の魔法」なのです。

 

今あなたは「マジシャンの使命」を思い出したのです。

 

心療内科の事例などから,スピリチュアルでなく,心因原理として理解できたはずです。

 

 

 

 

<催眠術的な口達者>

マックスメイビンは「エキボック(言葉の曖昧さ)」や「バーバル コントロール(言語による客制御)」の研究者としても有名です。

 

これはエリクソン催眠にも通じる「言葉の魔力」です。

 

(話しながら「to」と「Two」をダブルミーニングで無意識に想起させてカウントダウン(深化法)する等がエリクソン催眠)

 

「催眠術」や「魔術的演出」を絡めた演技スタイルの背後に,深い見識が垣間見えています。

 

 

本稿で伝えたい核心は,以上です。ここからは「より詳細な文化論」です。

 

 

<マックスメイビンとMr. マリック>

 

日本では,1970~1990年代にかけて「オカルトブーム」がありました。

 

テレビではユリゲラー(超能力者),宜保愛子(霊能力者)と並んで,Mr.マリック氏(超魔術)が大活躍しました。

 

「マジック(魔法)とトリック(奇術)の狭間にある」のが芸名の由来だそうです。前述した「魔術の構造」を思わせます。

 

初期マリック氏の髪型や服装,演技スタイルは,明らかにマックスメイビン氏からの影響も大きいでしょう。

 

下動画冒頭の口述や雰囲気づくりは,マックスメイビンを連想させる上手さが光ります。

 

 

 

では更にマックスメイビンの演技スタイルは,どこから来たのでしょうか?

 

マックスメイビンは,メンタリスト「セオドール アンネマン(1942没)」の書いた雑誌を読み,メンタルマジックに興味を持った経緯があります。

 

もともと「メンタリスト」は霊媒師(霊感商法)を指す語でもあります。

 

まさしく「霊媒師的な見た目」は意識したでしょう。

アンネマンのポーズは,ハンドパワーも思い起こさせます。

 

 

<マックスメイビンに学ぶ「芸風」>

東洋的なスタイル(もんぺ,サムイ,禅的黒,弁髪)も,マックスメイビンの特徴です。

 

フーマンチュー(欧州で流行した「東洋の怪人博士 小説」),オキト(1911年にオキトボックス考案)などの「東洋趣味や日本趣味」からの影響がありそうです。

 

※OKITOは東京(TOKIO)をもじった芸名です。

 


 

 

中国的な弁髪(三つ編み)スタイルの時期もありました。

 

こうした「歴史の重みを背負っているように見える」のが,マックスメイビンのオーラの秘密かも知れません。

 

 

<備考>

魔術や呪術には,この他の考察視点もあります。今回はマジックに絡む内容に着目しました。

 

他には...

●「感染症ウイルスで汚染されたぬいぐるみ」がウィルス発見以前の「呪いの正体」

 

●局地的に発達した科学が,他の未開人にとっての魔法(蒸気で開く扉など)

 

●化学としての錬金術

 

などの視点も,もちろんあります。

 

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